“やりたいこと”を軸にした転職が失敗する3つの理由


キャリアアドバイザーとして様々な方の転職を長年サポートしてきたが、その経験で転職に「失敗しやすい考え方」の傾向も自然と分かるようになった。いくつかある中でも社会人経験が浅い者に多いのが、”やりたいこと”を軸にした転職だ。

新卒で入社した1社目の仕事にやりがいを感じれず、早期離職をして、次こそ”やりたい”仕事に就きたいと考える方は少なくない。もちろんやりたいことを仕事にできれば素敵なことだと思う。だが、それを軸に転職すると失敗しやすいのも事実だ。なぜか。

そこで、このページでは”やりたいこと”を軸にした転職がなぜ失敗につながりやすいのか。逆に”やりたいこと”を仕事にするためにはどうすればいいのかを紹介したいと思う。

1.新卒で通じる”やりたいこと”は転職では通じない

“やりたいこと”を軸に転職を始める方は圧倒的に社会人経験が浅い者に多い。特に社会人1年未満で退職した方に多く、その後年数を減るごとにその数は減っていく。理由としては、新卒の就職活動の感覚をそのまま転職活動に持ち込むからだろう。

たしかに新卒の就職活動はある程度”やりたい”が通じる。なぜなら、皆まだ社会人経験がない学生だからだ。実務経験での判断材料がないので、その学生が”何をやりたいか”そしてそれを”なぜやりたいか”という点での一貫性があれば、採用する企業側もある程度は納得してくれる。

だが、その感覚は転職活動では通じない。新卒の就職活動では、ライバルが全員学生であり、企業が採用する上での判断材料はポテンシャル面が中心となる。そのため、意欲だけで押し切れることもある。しかし、転職活動でのライバルは経験者である。いくら”やりたい”という意欲を見せても、その横には実際にそれを実務として”やれる”者がライバルとして存在するのだ。

企業の立場になれば分かるが、”やりたい”者よりも”やれる”者の方を採用したいと考えるのは当然のことだろう。

極端な例だが、いきなり「企業の社長をやりたい」と言っても、(自分で会社を作るなら別だが)無理であることは自明なはずだ。転職では”やりたい”ことがあったとしても、それが自分に”やれる”のかを説明しなければいけない。その点が、新卒の就職活動と異なる。

社会人経験を経ると、周囲と比べて自分に何ができるのかが鮮明になり、自身の市場価値を把握しやすくなる。そのため、社会人経験を経れば経るほどに”やりたいこと”よりも”やれること”を軸にした転職が多くなる。だが、社会人経験が浅い者はまだこの視点が足りず、どうしても”やりたいこと”を軸にして転職をする。

“やりたいこと”はたしかに大事なのだが、自身の中途市場における立ち位置を把握しないままに、”やりたいこと”を軸に転職活動をすることは非常に危険である。

2.”やりたいこと”を本当に理解できているか?

また、そもそも”やりたいこと”を自分自身でも理解できていないことが多いとも感じる。社会人経験を経ると、様々な部門の者と関わることになり、他の職種・業界においてどのようなことが行われているか理解できるようになる。

だが、社会人経験が浅いと他職種・業界に対する理解は浅いままだ。”やりたいこと”があったとしても、実際にはその”やりたいこと”が独り歩きしていることが多い。そのためか、社会人経験が浅い者が話す”やりたいこと”の内容は非常に曖昧な傾向にある。

2−1.どのような業務内容か

そもそもしっかりと業務内容を理解できているか。イメージ先行で「経営企画がやりたい」や「マーケティングがやりたい」といった言葉をよく聞くが、実際に業務内容を正確に理解できていることは少ない。

インターネットで調べただけの情報と現場での業務内容は異なることが多い。華々しい業務をイメージしていても、現実には泥臭い仕事が多いかもしれない。

また、残念なことに”やりたいこと”であるにも関わらず、キャリアアドバイザーよりもその業務に関する理解が不足している方が多い。もちろん、キャリアアドバイザーはそうでない方よりも広く深い職種・業種理解ができているが、本当に”やりたいこと”なのであれば、せめて誰よりも”やりたいこと”の業務理解に努めるべきだろう。

2−2.どのようなスキルが必要とされるか

業務内容の理解ができれば、自ずと必要スキルも見えてくる。それでは、そのスキルを現時点で自分は持っているか。また、持っていなかったとしてもそのスキルを身につけるための努力はしているか。

忘れてはならないのが、中途採用は社会人経験者を採用するために行われているということだ。企業も悠長にあなたが一人前になるまでは待ってくれない。即戦力の者がいれば当然そちらを採用する。

そのため、「経理になりたい」と思っているのであれば、せめて簿記の勉強は始めるべきだろう。未経験OKの求人があったとしても、簿記を持っていない者と簿記を持っている者を比べれば、もちろん後者が企業にとっては採用メリットがある。簿記を持っていない者同士で比べるとしても、簿記を勉強している者が当然採用される。

もし”やりたいこと”があるのであれば、必要とされるスキルを理解して、そのスキルの習得に今すぐ動かなければならない。

2−3.採用市場はどうなっているか

また、”やりたいこと”の採用市場がどうなっているかについても理解しておかなければならない。”やりたい職種”の中途市場における採用人数は多いのか少ないのか?

たとえば「営業になりたい」という希望であれば、その”やりたいこと”は一気に実現可能性が高くなる。なぜなら、営業の求人は豊富にあるからだ。だが、「法務の仕事をやりたい」となると一気に実現可能性は低くなる。なぜなら、法務の求人は少ないからだ。

“やりたいこと”の実現可能性は、中途市場における需給関係でも変わる。”やりたいこと”を”やれる”可能性が高いのか低いのか、把握しておくべきだ。

3.”やりたいこと”を軸に転職すると失敗する3つの理由

これまでの内容でなぜ”やりたいこと”を軸に転職をすると失敗に繋がるか、ある程度イメージはできてきたと思う。そこで、改めて採用担当の目線から、なぜ失敗しやすいのか説明したいと思う。

3−1.またすぐに辞めると思われる

「○○をやりたい」だけでは採用担当者には刺さらない。

本当に業務内容を理解できているのか、必要とされるスキルを理解できているのか。こういった点を採用担当者はシビアに見る。イメージだけで”やりたい”と伝えても、実際に仕事を始めてみると”やりたくない”仕事も実はあるかもしれない。このような理想と現実の違いによってまた退職してしまう、と採用担当者に思われてしまう。

3−2.地に足がついていないと思われる

重ねて言うが、転職活動は就職活動と違う。あくまで社会人経験を経ていることを前提に企業は採用を行う。

自身のスキルを正確に把握しないままに、ただ”やりたい”と伝えても、企業からは地に足がついていないと思われてしまう。もし”やりたい”で転職をするのであれば、業務内容・必要スキルを正確に理解した上で、なぜ自分がそれを”やれる”のかを最低限示す必要がある。

3−3.企業はあなたの夢を叶える場所ではない

そもそも、企業はあなたの夢を叶える場所ではない。もしどうしても”やりたいこと”があるのなら、自分で起業してやればいい、というのが企業の本音だ。企業が中途採用を行うのは、それを”やれる”もしくは”やれる見込みがある”からだ。その点を忘れてはならない。

4.”やりたいこと”を将来”やる”ために

誤解して欲しくないのは、転職活動を”やりたいこと”を軸にして進めると失敗すると言ってはいるが、”やりたいこと”を仕事にすること自体を否定しているわけではないということだ。ただ、”やりたいこと”を仕事にするためには、そのための努力が必要だ。一直線でやれるわけではない。

バックボーンが何もない中でいきなり”やりたいこと”をやれることはない。そこで、最後に”やりたいこと”を将来”やる”ためにどうすればいいかを紹介したい。

4−1.何が”やりたい”かを明確にする

まず”やりたいこと”が曖昧なのであれば、それを明確にする必要がある。ゴールが定まっていないのに、そこに辿り着けることはできない。

何が”やりたい”かを明確にすれば、どのような職種・業種・企業でその”やりたいこと”が実現できるかが見えてくるはずだ。

4−2.必要なスキルを把握する

次に、”やりたいこと”に必要とされるスキルの把握が必要だ。今自分にないスキルなのであれば、そのスキルの習得に向けて努力していく必要があるだろう。

4−3.自分には何が”やれるか”把握する

“やりたいこと”が明確になり、そのために必要なスキルを理解できたら、次は自分に何が”やれるか”を把握する必要がある。そのことで、現時点の自分と”やりたいこと”までの間にどれだけの距離があるか見えてくる。

4−4.何をすれば”やりたいこと”を”やれるか”考える

最後に、何をすれば”やりたいこと”を”やれるか”を考える必要がある。転職活動は基本的に”やれること”を活かして行うことになる。”やれること”と”やりたいこと”の関連性が深ければ深いほどに、”やりたいこと”をやれる可能性はある。

たとえば「人事になりたい」としよう。人事は未経験OKの求人が少ないが、”人材業界出身者”は人事未経験者だとしても受け入れることが多い。であれば、人材業界を経験してから人事を目指すという方法もある。

また、”やりたいこと”の種類によってはすぐにやれるようになることもある。例えば営業・エンジニアなど採用人数が多い職種だ。これは、採用枠が多いので未経験でもOKとされることが多いからだ。

ただいずれにしても、何をすれば”やりたいこと”を”やれるか”を知るには、やりたいことを明確にして求められるスキルを理解しなければならない。だからこそ、まずはその点をクリアにしなければならないのだ。

5.まとめ

重ねて言うが、”やりたいこと”を仕事にできることは素晴らしいことである。だが、転職活動はそれだけで上手くいくほど甘くはない。本当に”やりたいこと”があるのであれば、そのためのステップをイメージして、努力していかなければいけない。

“やりたいこと”を実現するためにどうすればいいか、改めて真剣に向き合ってほしいと思う。


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